コトノハ

かるいよみもの。

永い言い訳

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学生時代からの同級生だった美容師の夏子と結婚し、

子はなく、夫婦仲も冷え切っていた小説家の幸夫は

突然のバス事故で妻を失うが、

彼女が亡くなった瞬間は

愛人と自分の家で浮気の真っ最中だった。

愛人が罪悪感を感じて去るのに、

幸夫は一向に夏子の死を悲しめないでいた。

 

一方で夏子とスキーに向かっていた友人のゆきは

まだ幼い二人の子を遺して亡くなり、

長距離トラック運転手の夫、陽一はその死から立ち直れずにいて、

仕事で何日も家を明けるため、まだ小6の長男の真平が

幼い妹の世話のため、受験を諦めようとしていた。

その二人の子の面倒を見るうちに、幸夫は充実感を覚え、

四人の不思議な関係が出来上がっていく。

 

幸夫は劣等感が強く、自分の遺伝子を残したくないから

という理由で子作りをしなかった。

でも夏子亡き後の彼はそれを悔いているように見えた。

夏にはゆきの家族と海に行き、

おそらく陽一とゆきの子どもたちの髪も切っていた夏子は

本当にゆきが羨ましかったにちがいない。

 

彼女が幸夫に送れないまま送信ボックスに残していたメールは、

冒頭の幸夫のネチネチした態度からしたら当然で、

彼女の心に気付いていなかった彼は本当にバカだなと思う。

それでもメールを送れなかったのは、

まだ彼を想う気持ちがあったのか…

 

前から思うのだけど、

親子というのは血のつながりで親と子になるのではなく、

一つ屋根の下で寝起きし、同じ物を食べることで、

親と子になっていくのではないかと。

夫婦も元はと言えば赤の他人。

だとしたら、血のつながらない関係でも親子になれるのでは?

幸夫には陽一とゆきの子どもたちがいて、救われたと思う。

 

亡くなった人を想う方法は人それぞれで、

忘れる忘れないっていう議論は本当に愚かだと思う。

忘れることなんて決してできないのだから、

無理に忘れることなんてしなくていい。

するべきなのは、前に進むことだけ。